健康診断で「血圧が高めですね」と言われて、高血圧や不整脈を治す血管拡張治療薬(降圧剤など、中枢性あるいは末梢性に作用して血管拡張を引き起こす薬物の総称)を毎日飲んでいる……。
そんな高血圧の男性は、勃起力が衰えてED(勃起不全)になるケースが多く、高血圧症を患っている人の4分の1がEDであると言われています。(参照:『なぜ一流の男は精力が強いのか? 男性ホルモン力を上げれば人生が変わる』岡宮 裕)
そこで気になるのがED治療薬です。「病院に行くのは恥ずかしいので、手軽な通販でED治療薬を買ってみようかな?」という思いが頭をよぎってしまいます。でも、高血圧治療のために降圧剤などを服用している場合、バイアグラ・レビトラ・シアリスといったED治療薬を併用することはできるのでしょうか。
結論から言いますと、併用禁忌(へいようきんき)薬や併用注意薬が多種あるので、医師の処方以外のED治療薬を服用することは大変危険です。僕が調査したところ、死亡事例も見つかりました。間違っても、安易な判断で通販からED治療薬を購入することは、絶対に止めてください。
高血圧でもEDの薬を飲んで大丈夫なんですよね? バレないように、通販で買ってみようと思っているんですよ。
気持ちは分かるが、それはとても危険だ。きちんと医師の処方を受けないとな。
Contents
ED治療薬と高血圧治療薬の相性が悪い理由
高血圧の治療薬を服用していて、バイアグラ・レビトラ・シアリスといったED治療薬の服用を考えるなら、必ず医師の処方を受けてください。なぜなら併用禁忌(へいようきんき)薬がたくさんあり、その判断は素人では手に負えないからです。まずは、高血圧治療薬についてご説明します。
高血圧治療薬とは?
高血圧治療薬とは、収縮期血圧(最高)が140mmHg以上あるいは拡張期血圧(最低)が90mmHg以上の場合に、その血圧を低下させる目的で用いられる治療薬です。主要なものにアムロジピン(商品名:アムロジン・ノルバスク錠)、ニフェジピン(商品名:アダラート錠)などがあります。
なお高血圧とは、日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」によると基準値は診察室血圧値で140/90mmHg以上、家庭血圧値で135/85mmHg以上の数値であることをいいます。
(参照:『男性ホルモンの力を引き出す秘訣』秋下 雅弘)
高血圧になると血管に圧力がかかって、血管が損傷して硬くなっていきます。いわゆる動脈硬化(動脈の内壁が肥厚し硬化した状態)です。そして、動脈硬化の影響が最初に現れるのがEDだと言われています。なぜなら、人体の中で一番細いのが性器の動脈だからです。
性器の動脈の50%が閉塞すると、EDになると言われている。
併用禁忌薬を甘く見ると、命の危険すらある!
ED治療薬には、併用禁忌(へいようきんき)薬があります。併用禁忌薬とは、飲み合わせの相性が悪い薬のことです。例えばニトログリセリンなどの硝酸薬は、心臓の冠状動脈を拡張させて心筋への血液の流れを良くし、血圧を下げる作用があります。同じくED治療薬も血圧を下げる作用があります。したがって併用することで、血圧が下がりすぎる危険性があります。最悪の場合、命の危険にかかわるのです。(参照:『EDになる理由』室田 英明)
薬の飲み合わせって、そんなに危険なんですか? なんかイメージできないなあ。ちょっとくらい大丈夫なんじゃないですか?
ED治療薬を飲みたいなら、併用禁忌薬を把握する必要がある。しかし素人では難しいんだ。これを見てくれ。
ED治療薬の併用注意と併用禁忌薬
以下はED治療薬の併用注意と、併用禁忌薬について書かれている資料の一部抜粋です。専門用語が多すぎて、素人では判断が難しいのが現状です。きちんと泌尿器科に行き、医師の診断と処方に従うことが、本当の意味での健康につながります。
バイアグラ(シルデナフィル)の併用禁忌薬
■不整脈の薬の一部
・アンカロン 等
■肺高血圧症の薬の一部
・アデムパス(リオシグアト)
レビトラの併用禁忌薬
■不整脈の薬の一部
・リスモダン、キニジン、アジマリン、アミサリン、シベノール、アンカロン 等
■水虫の内服薬の一部
・イトラコナゾール、イトリゾール 等
■抗ウイルス薬の一部:
・HIV治療薬 インビラーゼ、カレトラ、クリキシバン、ノービア 等
■チトクローム阻害剤
・リトナビル、インジナビル 等(引用:新宿ウエストクリニック「ED治療薬の併用注意と併用禁忌薬リスト」)
薬の併用禁忌(へいようきんき)かぁ。飲み合わせの悪い薬ってあるんですね。これは確かに素人では覚えきれないなぁ。
ED治療薬(バイアグラ・レビトラ・シアリス)の併用禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方
- 硝酸剤あるいは一酸化窒素(NO)供与剤を服用中の方
- 心血管系障害を有するなど性行為が不適当と考えられる方
- 不安定狭心症のある方、又は性交中に狭心症を起こしたことのある方
- 重度の肝障害のある方
- 血圧の上が90mmHg以下の低血圧の方
治療により管理されていない高血圧の方で
安静時に上が170mmHg以上、下が100mmHg以上の場合- 脳梗塞・脳出血や心筋梗塞の既往歴が最近6ケ月以内にあった方
- 網膜色素変性症患者
- 先天的に不整脈(QT延長症候群)がある方(これはレビトラの使用禁忌になります)
(引用元:新宿ウエストクリニック「バイアグラ、レビトラ、シアリスの使用禁忌について」)
治療している高血圧で値が上記に該当していなければ大丈夫だ。高血圧なら全員ダメってわけじゃない。しかし素人が自分で判断してはダメだ。併用することで死亡した事例もある。
ED治療薬の死亡事例(抜粋)
事例1:63才男性。グルコトロール(グリピジド)、アロプリノール及びアスピリンを服用し、2型糖尿病、高コレスレロール血症、高血圧および発作型心房細動の病歴を有する。バイアグラ服用後性行為を行い、服用の概ね1時間後に出血性拍出があり、病院で患者の様態は悪化し、死亡した。
事例2:62才男性。ジゴキシン、インスリン及び降圧剤を服用し、糖尿病、うっ血性心不全、不整脈およびいくつかの肺繊維症の病歴を有する。バイアグラの初期量を服用し、概ね30分から1時間後に、性行為は行わずに、倒れ、その時には既に息がなかった。
事例3:64歳男性。イムダー(一硝酸イソソルビド)を服用し、心筋症、冠状動脈疾患、成人型糖尿病の病歴、及び狭心症様の病歴を有する。バイアグラを1回量服用し、性行為を行った後、気を失った。
事例4:73歳男性。ハイトリン(塩酸テラゾシン)を服用し、高血圧の病歴を有する。2度目にバイアグラを服用した後、性行為中に意識不明になる。
事例5:48歳男性。併用薬は不明、糖尿病の病歴を有する。バイアグラ服用後、性行為中胸痛を覚えた。救急車の車内でニトログリセリンを投与され、胸痛がおさまり30分間症状が安定した。再び胸痛が起こり、心臓停止、救急病棟にて死亡した。
事例6:70歳男性。カルジゼム(塩酸ジルチアゼム)、テノーミン(アテノロール)及びシンスロイド(レボチロキシンナトリウム)を服用し、冠動脈疾患、高血圧及び甲状腺機能低下症の病歴を有する。バイアグラ服用後死亡。
このように、高齢の男性が多いですがED治療薬を飲んで死亡した事例がいくつもあります。いわゆる「腹上死」です。男性としてはある意味、本望なのかもしれませんが、相手の女性は大迷惑です。医師を呼ばないといけませんし、女性は風評被害にも遭います。本当に気を付けましょう。
(引用元:日本薬剤師会「市販後情報-クエン酸シルデナフィル(バイアグラ):バイアグラ使用に関するFDAに対する重篤症例概要報告」)
うーん、やっぱり医師の処方を受けないとダメなんですね。でも、病院に行くのは恥ずかしいなぁ……。女医なんですよね。
向こうもプロだ。そんなことを気にしているのはお前だけだから安心していい。
まとめ
このように、高血圧の治療を受けていても、ED治療薬を飲めるケースはあります。しかし飲み合わせの悪い薬があり、最悪の場合は命の危険にかかわることがあります。
ED治療薬は欲求に直結する薬なので、併用の注意点をいくら説明しても、勝手な使い方をする人が多いようです。そして、行為の一時間程度前に飲むので、行為中に倒れて救急車で運ばれる人が凄く多いのです。この場合、女性が救急車を呼んで搬送されるわけですが、仮に一命をとりとめても後で医者から話を聞かれますし、相手の女性にも大変な迷惑や風評被害を与えてしまいます。
価格が安いからといって、素人判断で個人輸入やジェネリック薬などのED治療薬を通販で購入することはとても危険です。かならず最寄りの泌尿器科で診療を受けてくださいね!